2025.09.01
メディア展望
『メディア展望』9月号発行のお知らせ
編集長の一言二言(9月号)
■今月号のトップページには元日経新聞の坪田知己氏に、近年、報道現場を歪めている「アテンション・エコノミー」の問題について、学者の論考を交えて解説していただきました。新聞、テレビの時代を経て個人が自由に情報発信できるSNSが登場したことでメディア環境は激変し、今や広告収入の約5 割をインターネット広告が占めています。「アテンション・エコノミー」とは、過激な言動で世間の関心を集め、ネットでアクセス数を稼いで自らの利益につなげることです。先のフジテレビの記者会見では番組の担当者が自分の番組で使うために同じ質問を繰り返し、フリーの記者などが、自らのSNSにアップするために、乱暴な質問を続ける姿が批判を浴び、ジャーナリズムに対する評価が大きく低下しました。メディア関係者のみならず、一般の人々も関心を持ってほしいテーマだと思います。
■永田町では今、超党派の議員連盟「石橋湛山研究会」が静かに注目されています。言論界から政界に転じ、後に首相を務めた石橋湛山は「小日本主義」を提唱。戦争よりも産業を活発にして国や国民を富ますことが政治の本領と考えていました。ところが現実の政治状況はどうでしょう。先の参院選で世論受けする政策を掲げ、必死で支持を訴えた議員で、当選後に公約を実現するために法案をまとめる努力をしたり、日本の50年後の夢を語る議員がどれだけいるでしょうか。前言を撤回したり、言い訳に終始する議員ばかりで、中には食い扶持を得るためにバッジを付けたとしか思えない議員が散見されます。片や大敗の責任をうやむやにしたまま居座る石破茂首相。「政治とカネ」の問題で自民党大敗の要因をつくりながらも、石破おろしに奔走する旧安部派幹部の動きには、世間の厳しい視線を分かっているのかと言いたくなります。まるで自民党の「最後の宴」を見ているようです。共同通信社社友の栗原猛氏の原稿では、こうした政治の現状に警鐘を鳴らしています。現職の国会議員にぜひ一読してほしい内容です。
■ベトナム戦争のさなかにナパーム弾で大けがを負って逃げ惑う少女の写真が全世界に衝撃を与えましたが、戦後50年を経て、米国内ではカメラマンは誰かを巡って論争となっています。メディアの在り方自体も問われる問題だけに、元AP通信社の我孫子和夫氏に、その裏話や背景を解説していただきました。一方、メディアへの〝弾圧〟を強めるトランプ大統領ですが、津山恵子氏の海外情報(米国)では、米国内で英国メディアの伸長ぶりが目立つことを報告してもらいました。トランプ氏が気に入らないニュースを「フェイク」と切り捨て言論空間が閉塞する中で、国民がニュースに国際的で多様な視点を求めていることが背景にあるようです。 (一ノ瀬英喜)