2025.05.01

メディア展望

『メディア展望』5月号発行のお知らせ

編集長の一言二言(5月号)

■今月のトップページには「放送時評」の拡大版として、フジテレビ問題で第三者委員会が公表した調査結果に関する音好宏上智大教授の論評を掲載しました。調査結果からは、予想以上にフジテレビ内部のガバナンスが崩れていたことがうかがえます。中居正広氏のスキャンダルに端を発した問題は、フジテレビのみならず、芸能界とテレビ局との常識では計り知れない関係をも浮き彫りにしました。フジテレビにとっては、報告書の公表が終わりではなく、信頼回復と再生に向けた第一歩で、痛みを伴う組織改革ができるかが問われています。

■トランプ政権がスタートして3 カ月。相互関税などトランプ大統領が繰り出す一手に全世界が翻弄(ほんろう)されています。井芹浩文氏のメディア談話室では、マックス・ウエーバーの論考をたたき台にトランプ政治とは何なのか、その本質について、従来の報道とは異なる視点で詳細に解き明かしています。ぜひ一読していただきたいと思います。また、AP通信への取材制限などホワイトハウスが打ち出す政策が「報道や言論の自由」を侵害していると批判を浴びています。津山恵子氏の海外情報(米国)では、〝御用メディア〟をあからさまに重用して恥じないトランプ政権によって、米国のメディアがかつてない試練に立たされている現状を伝えています。一方、特派員リレー報告では、「トランプ砲」への対応に苦慮する中南米各国の現状を時事通信の田中健吾サンパウロ支局長に報告していただきました。

■今月号から2 回続きでボーン・上田記念国際記者賞受賞者の講演録を掲載します。1 回目は読売新聞の倉茂由美子ローマ特派員のウクライナ報道です。ブチャでの虐殺は国際社会に大きな衝撃を与えましたが、残された女性たちが街を守ろうと結成した「ブチャの魔女」と呼ばれる女性部隊の話など一連のルポについて、経緯や裏話などをお話しいただきました。

■「100年前の米調査報道史」と題した古賀純一郎茨城大学名誉教授の連載を今月号からスタートします。調査報道はメディアに求められる重要な作業ですが、100年前からその活動は行われており、1 回目は「突撃取材の王者」と言われたネリー・ブライを取り上げています。 (一ノ瀬英喜)