2023.01.01

メディア展望

『メディア展望』1月号発行のお知らせ

編集長の一言二言(1月号)

■明けましておめでとうございます。今号で本誌は「新聞通信調査会報」というタイトルで1963年1月に創刊以来、ちょうど60年となりました。手前味噌ながら本誌の「還暦」にちなみ、倉沢章(とし)夫前編集長、鳥居英晴氏、有山輝雄氏に本誌の歴史と分析を巻頭でお願いしました。

本誌のバックナンバーは戦前戦中の通信社・同盟通信について学ぶ上で欠かせない史料と思ってきましたが、今回初めて創刊号を読みました。すると、執筆陣の1人に江尻進氏の名。第2次世界大戦中の欧州戦線での体験を元に「ベルリン特電」などの著書を残した元同盟通信ベルリン支局長です。同盟通信についてだけでなく、第2次大戦中のドイツと日本の関係を知る上で欠かせない史料を残した一人です。

2009年4月号から「メディア展望」に名を変えた以後は、より間口を広げた月刊誌として現在に至っています。今後もこの間口で未来の読者にも届ける雑誌を作り続けていきたいと思っています。

■昨年の十大ニュースの海外トップは時事・共同ともウクライナ戦争でした。今後も緊迫した状況が続くとみられます。戦争が始まってしまったという結果は、まずは外交の敗北であり、さらにはジャーナリズムの敗北でもあると思っています。その敗北をかみしめた上で、ジャーナリストにできることは一刻も早く戦争を終わらせ、平和に導くことでしょう。そのためにはウクライナの民間人、前線のウクライナ、ロシア両軍兵の犠牲と悲しみを仔細に伝えるとともに、そろそろこの戦争の「出口」を論じ、訴えていくことも重要だと思います。

■「出口」に一刻も早くたどり着くには時に「正義」と妥協せざるを得ない場合もあるというのが過去の戦争から得られる教訓の一つです。これは同盟通信から正負の遺産を引き継いだ当会としても伝えていきたい教訓です。本号収録のシンポジウム「変容する戦争ジャーナリズム」パネルディスカッションをはじめ、日米メディアの最新状況を伝えている井内康文、津山恵子両氏の論考は今後のメディアとジャーナリズムを考える上で大変参考になりました。(石山永一郎)